ノルウェーでスキーを楽しむポースケ(イースター)休暇 その3

ノルウェー王国大使館のサイトに掲載されていた、ポースケ(イースター)休暇中のノルウェーでのスキーツアーの望月の記事をそのまま載せておきます。

第3話

ノルウェー人にとってヒッタ(Hytta: 山小屋・別荘)はとても大切な場所です。ただ「別荘」という日本語ではうまく言い表せない特別の意味がある存在かもしれません。それは忙しい日々から離れて静かな時間を過ごすため、自然を身近に感じるため、そして文明社会の刺激から身を隠す意味があるように思います。

どのくらいかはわかりませんが、かなり多くの人がこのヒッタを所有しているようです。もし自分で所有していなくても、親類の誰かが持っているとか知人のヒッタを借りるなど、それぞれがどこかに普段の生活から離れる場所を持っているようです。

私の友人のヒッタをご紹介しましょう。10年程前に古いヒッタが火事で消失し、その後新しく建て直したもので標準的な大きさ(約55平米)のようです。

白樺林の中にあるシンプルなヒッタ

石造りの大きな(重そうな)薪ストーブ!

第1回目にお話しましたように、冬は雪が積もっていて車で入る事はできませんが、夏になると車でヒッタまで入る事ができます。

また多少の苦労はいとわず、できるだけ普段の生活から遠ざかるという基本的な考えがありますので、電気も水道も来ていません。キッチンで使うガスボンベ以外は水も薪もさらに電気まで現地調達です。この点で、ヒッタでの生活はかなりエコロジーといえそうです。

現地調達の電気はヒッタの外壁に取り付けた太陽光発電のソーラーパネルから得ています

このパネルから発電された電気がバッテリーに蓄電される仕組みになっています。蓄えられた電気で室内の電灯とラジオをつけ、シャワーのためのポンプが回るようになっています。

自動車のバッテリーのような鉛蓄電池

 スキーツアーをしてくると汗をかく事もありますが、そのあとの暖かいシャワーはたいへんありがたいもの。薪ストーブで暖めたお湯をバケツに1杯くんでシャワーのポンプの吸い込み口をバケツに入れて、電原オンでシャワーからお湯が出ます。

ただし注意しなければならない事は、バケツ1杯のシャワーのお湯で頭か ら身体全部を洗わないといけないという事です。洗っている途中でお湯が無くなるとたいへんな事になりますね。必然的にお湯を節約する事が身に付きます。私 も最初は途中で外をのぞきながらシャワーを浴びていました。

下のバケツから左のポンプで吸い上げてシャワーからお湯が出ます

キッチンはガスが主役です。コンロ、オーブンは当たり前ですが、冷蔵庫までプロパンガスで動きます。

プロパンガスで動く冷蔵庫やオーブン付きのガスレンジなどがあるキッチン
水道はありませんから水は自分たちで沢の水を汲んで使います。しかし、冬がやっと明けそうなこの時期は沢までの雪を掘るのが一苦労です。年によっては数メートルも掘らないと水が出てこなかったり、凍っていたりするそうです。もちろん、水は一度煮沸してから飲み水にしています。


 こう見ると、ヒッタは過ごしやすそうですが、最近はもっと便利に電気や水道をひき広いヒッタでもっと快適に過ごそうという人々が多いという話を聞きました。

ちょっと本質から離れているようですが、それも時代の変化なのでしょうか。

ツアーから帰ってきてストーブに薪をくべる

 ヒッタでの生活は必要な物だけあれば良いということを、少しの間だけでも思い出させてくれます。刺激の多い普段の生活から五感を開放してくれるようです。 

数日間ヒッタで静かな時を過ごしながらのスキーツアーは、より自然との一体感をもたらしてくれました。ヒッタでの生活をそのまま日本に持ってくる事はでき ませんが、毎日刺激の多い私たちにも大切な事のように思います。


彼らのヒッタの名前はKRYPILY。自分たちのヒッタに名前を付けている人も多いようです。
次回はいよいよ帰路につきます。日本も今年のGWは高速道路の渋滞が話題になりましたが、ノルウェーのイースターはどうだったでしょうか。
ではまた。

 
第4話へつづく ノルウェーでスキーを楽しむポースケ(イースター)休暇 その4